農業用ドローン|農薬散布に必要な許可を解説します

ドローンで農薬散布をしているおじいさんの画像

『スマート農業』

皆さんは聞いたことございますでしょうか?

農林水産省では、「スマート農業」を「ロボット技術やICT等の先端技術を活用し、超省力化や高品質生産等を可能にする新たな農業」と定義しています。

私なんかは徳島の田舎育ちですので周りを見渡せば畑や田んぼばっかりで、おじいちゃんやおばあちゃんが農作業をしている風景が当たり前でした。
昔からの農業を知っているからこそ、最初はドローンやICTなどの先端技術が農業で活用されるイメージがなかったんですよね。

ドローンに業務として関わるようになってからドローンが農業にむっちゃ活用されてるやん!と知ることができました。
ドローンを活用することにより、人の手間の削減や作業時間を大幅に減少することが可能となります。

農業でのドローンの活用方法として有名なのが『農薬散布』ですよね!

ドローンの農薬散布拡大へ 専門業者が石垣初参入(八重山日報) – Yahoo!ニュース
上記の記事の様に農薬散布の代行専門業者なども増加しており、非常に市場が伸びている分野でもあります。

この記事では、ドローンで農薬散布をする際に必要な手続きについて一緒に考えてみましょう。

ドローン購入⇒農薬散布手続きの流れ

せっかく農業用ドローンを購入したのであれば、すぐにでも飛行させたいと思いますがはやる気持ちは押さえてください。
ドローンを飛行させるには航空法などの様々な法律を理解しておく必要があります。

ドローンに関係する航空法については下記記事にまとめていますので、お時間ある際にでもお読みください。

たった5分でわかるドローンに適用される航空法の全体像

 

読むのがめんどくさい・ある程度分かっているという方はこのままお進みください。

・・・いいですか?

それでは進めましょう。
ドローンを購入してから農薬散布を行うまでの手続きの流れを簡単に説明すると下記の様になります。

①ドローン購入

②機体登録

③国土交通大臣への飛行許可申請

④飛行計画の登録

⑤農薬散布計画書の提出(都道府県による)

⑥農薬散布

⑦飛行日誌の作成

①~⑦の手続きが基本的には必要となる訳です。

結構めんどくさいですよね・・・。これらの手続きは、農業用ドローンを購入した代理店がやってくれる場合もありますし、ご自身で勉強して手続きをしている方、弊所のような行政書士などの代行業者へ依頼している方など様々です。

①については性能と見た目でお好みでお選びください。
②~⑦について詳しく説明していきますね。

農業用ドローンの機体登録

まずは航空法の根拠条文を見ていきましょ。

(登録)
第百三十二条 国土交通大臣は、この節で定めるところにより、無人航空機登録原簿に無人航空機の登録を行う。

これは皆さんがドローンを購入した後に行う機体登録になります。
無人航空機登録ポータルサイト – 国土交通省

上記サイトからオンライン申請もしくは郵送での申請も可能です。
下記が国土交通省のウェブサイトで登録の概要をわかりやすく図でまとめてくれています。
登録の流れ

登録の流れは以下のようになります。

①アカウントの開設

②新規登録の申請

③手数料の納付

④登録記号・登録情報の確認

⑤リモートID機器へ登録

上記の流れでオンライン申請であれば約2日~1週間程度の期間はみておきましょ。
郵送の場合は1週間~10日程度で少し長めにかかります。

ちなみに、下記のような場合は15日以内に登録抹消申請が必要になりますので注意してくださいね。

① 登録無人航空機が滅失し、又は登録無人航空機の解体(整備、改造、輸送又は保管のためにする解体を除く。)をしたとき。
② 登録無人航空機の存否が二箇月間不明になつたとき。
③ 登録無人航空機が無人航空機でなくなつたとき。
④ 更新をしなかった場合や整備不良などで登録が取り消された場合

国土交通大臣への飛行許可手続き

ドローンの飛行許可は大きく分けると、『飛ばす場所』『飛ばす方法』について許可を取得する必要があります。

ドローンの飛行の許可が必要となる場所

飛行制限区域

航空:無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法 – 国土交通省  より引用

「空港等の周辺」
空港など周辺では制限高度が定められています。
「緊急用務空域」
緊急用務を行う消防防災ヘリなどが飛行する空域のことです。
緊急用務空域の指定は国土交通省のウェブサイトで公表されます。また、指定の解除も予めの予告はありません。
「150m以上の上空」
単純に地表から飛行しているドローンまでの高さのことです。
「人口集中地区」
ドローンのトラブル等による落下により危害を及ぼす可能性の高い人又は家屋の密集地域です。(DID地区)

 

上記の中でも、農薬散布の際に引っ掛かってくるのはほぼ人口集中地区(DID地区)ですね。
散布する農耕地の場所が人口集中地区に該当するか事前に調べておく必要があります。

ちなみにこれらの飛行制限については、国土地理院の地理院地図で調べればわかりやすいです。
地理院地図 / GSI Maps | 国土地理院

 

ドローンが飛行する方法

『特定飛行』に該当する場合にも飛行許可が必要となります。

下記が『特定飛行』と呼ばれる飛行方法となります。

飛行の方法

農薬散布でドローンを使用する際には、下記の④つの特定飛行に該当する可能性がありますね。

①人または物件と距離を確保できない飛行
ここでいう人や物件は第三者や第三者の所有する物件です。
人については、飛行を行っている者及び関係者。ドローンの操縦者や作業員以外の人のことです。通行人などが該当しますね。
物件も隣の畑や信号機や電柱・通行する車両などになります。これらの『第三者の人や物件』との距離ですが、具体的には30mの距離を確保する必要があります。
②目視外飛行
目視外飛行は、読んでその通りドローンが目視できない状態で飛行させることです。『高く飛ばす訳でもないし、自分の見える範囲でしか飛行させないよ!』と思うかもしれませんが、プロポを見ながらの飛行も目視外飛行に該当する為、注意が必要です。農業用ドローンは、シンプルな機体も多いのでモニターが付いていないタイプも多いですよね。
③危険物の輸送
農業用ドローンで農薬散布を行うにはもちろん農薬を運ぶ必要がありますよね?
その農薬を運搬してるときに不具合が発生したらシャレになりません。
その為、農薬など危険物の輸送も国土交通大臣の承認が必要となっています。
・具体的な例
農薬、火薬、高圧ガス、引火性液体、可燃性物質類、酸化性物質類、毒物、腐食性物質、凶器、放射性物質など
④物件の投下
物件投下は文字通りです。何らかのものをドローンで運搬し、空中で投下することです。
農薬などの液体を散布する行為も物件投下に該当しますので承認が必要となります。

 

特定飛行を申請する場合は飛行経験が必要となります。(ドローンスクールなどの講習で要件を満たすことが可能)

  • 10時間以上の飛行経歴
  • 5回以上の物件投下の実績を有し、物件投下の前後で安定した機体の姿勢制御ができること。
  • 必要な実績及び能力を有していない場合には、ドローンを飛行させる者又はその関係者の管理下にあって第三者が立ち入らないよう措置された場所において、物件投下の訓練を実施すること。

 

上記が航空法で定められている許可や承認が必要な場所と飛行方法になります。

ちなみに飛行開始予定日の少なくとも10開庁日前まで
 に飛行許可申請が必要です。
余裕を持って散布予定日の2週間~3週間前には申請しましょ。

開庁日ですからね。単純に最低でも2週間前ですが、実務上の経験で言うとオンライン申請であれば1週間かからないことがほとんどです。

飛行許可申請の種類

ドローンの飛行許可申請は2種類の制度があります。

・個別申請  飛行する日時を決定して都度申請を行います。

・包括申請  決められた期間内に決められた条件内で繰り返し飛行することが可能です。

2種類言うてますが農業散布にドローンを使用する場合はほぼ『包括申請』となります。
というのも農薬散布は天候や風の強弱に敏感ですので、日時を前もって決めてしまうと悪天候に対応できないんですよね。
さすがに日程の調整が面倒なので、ほぼ皆さん包括申請をしていると思います。

農薬散布の飛行許可申請をオンライン申請する際のポイント

・追加基準に適合させること

危険物輸送

  • 危険物を入れた容器は不用意に脱落する恐れがないこと
  • 危険物に対する耐性を有していること。

写真とテキストで説明する必要があります。
ボルトで固定している写真や容器の写真。
固定方法と容器の素材をテキストで説明しましょう。

物件投下

  • スイッチ等により物件を投下する機能を有していること
  • 不用意に物件を投下しない構造を有していること

スイッチの写真や防止装置などの写真で大丈夫です。

飛行計画の登録(通報)

ちなみに、飛行計画の通報をせずに特定飛行を行った場合は30万円以下の罰金が科せられます。
ひと手間を惜しまないようにしましょうね。

飛行計画の登録は下記のサイトで行います。

DIPS2.0:https://www.ossportal.dips.mlit.go.jp/portal/top/

・機体と操縦者の情報を設定
・飛行経路と飛行範囲、高度を設定
・飛行する日時を設定
・飛行する目的と飛行方法を設定

こんな感じです。
飛行計画については下記記事で詳細を解説していますので併せてお読みください。

飛行計画の通報義務|初心者が読むべき完全マニュアル

農薬散布計画書の提出

さて、上記までで飛行する前にあなたがするべき航空法の手続きは終了です。

ひとまず、お疲れさまでした。

しかし、都道府県によってはまだ終わりではありません。

散布前 『農薬散布計画書』
散布後 『実績報告書』

が必要になるケースがあります。

下記の都道府県では、農薬散布の際に手続きが必要となります。

都道府県提出時期実績報告の有無
岩手県散布の前月末迄有(速やかに)
宮城県5月から7月の場合は4月10日迄有(4月から12月の場合は12月末迄)
8月以降の場合は7月10日迄有(1月から3月の場合は3月末日迄)
福島県散布の3週間前迄(殺虫剤及び殺虫・殺菌剤)有(2週間以内)
散布の1週間前迄(殺菌剤・除草剤等)
千葉県散布の前月10日前迄(努力義務)
埼玉県毎年度3月31日迄有(1か月以内)
神奈川県散布の14日前迄有(速やかに)
群馬県散布の14日前迄有(1か月以内)
茨城県散布の前月10日前迄有(速やかに)
長野県有(1か月以内)
岐阜県前年度の3月10日まで
京都府前月末有(速やかに)
大阪府散布の20日前迄
山口県前月末有(速やかに)
高知県散布の10日前迄有(速やかに)
長崎件前月末有(速やかに)

 

農薬散布

ようやく農薬散布です。
飛行させる前に今一度安全のためのガイドラインをお読みください。

mujinmalti_guideline.pdf

ポイント
操縦者、補助者(無人マルチローターの飛行状況、周辺区域の変化等を監視し、的確な誘導を行うとともに、飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行い、操縦者を補助する者)等の関係者及び周辺環境等への影響に十分配慮し、風下から散布を開始する。

 

標準的な散布方法(メーカー取扱説明書がない場合)
・飛行高度は、作物上2m以下。
・散布時の風速は、地上 1.5mにおいて3m/s以下。
・飛行速度及び飛行間隔は、機体の飛行諸元を参考に農薬の散布状況を随時確認し、適切に加減する。

 

散布方法①

飛行日誌の作成

「飛行日誌」とは、ドローンを含む「無人航空機」を飛行させる者が、その飛行内容や機体についての情報などを記録するものです。
紙の書類、または電子データで作成し、その内容は以下の3つの記録で構成されます。

・飛行記録:飛行の年月日、離着陸場所・時刻、飛行時間、飛行させた者の氏名、不具合やその対応などを記載する
・日常点検記録:日常点検の実施の年月日・場所、実施者の氏名、日常点検の結果などを記載する
・点検整備記録:点検整備の実施の年月日・場所、実施者の氏名、点検・修理・改造・整備の内容・理由などを記載する

飛行日誌は、作成・携行・保管が義務図けられていますので要注意です。

・作成義務:特定飛行を行う場合、飛行日誌の作成が義務付けられています。
・携行義務:飛行時には、作成した飛行日誌を紙媒体または電磁的記録で必ず携行する必要があります。
・保管義務:機体が国土交通省に登録されている間は、飛行日誌を継続的に記録・保管しなければなりません。

農薬散布を行う場合は、必ず特定飛行になりますので『飛行日誌は義務』だと覚えておいてください。

 

上記がドローンで農薬散布を行う為の手続きの概要となります。
最後によくある質問をまとめてみましたのでお読みください。

ドローン

よくある質問(ドローンでの農薬散布手続き)

ドローンでの農薬散布を行うには免許や資格が必要?

結論から言いましょう。

必要ありません。

しかし、農薬散布では、ドローンを飛行させるだけでなく薬剤を空中から適確に散布しなければなりません。そこでドローンを正しく安全に使用するために「農林水産航空協会」が存在し、機体性能を試験し合格した機体を農水協認定機といいます。農水協の認定機を使用するためには農水協の認定教習所を受講して資格を取得しなければいけません。

農薬散布に適した農薬の種類は?

農林水産省は、使用基準に従って使用すれば安全であると判断できる農薬だけを農薬取締法に基づき登録を行っています。
農薬取締法により、登録されていない農薬は使用できません。
また、登録の際には使用できる「作物名」や「使用時期」、「使用量」、「希釈倍数」などの「使用基準」が定められており、農薬が登録されていても使用基準以外の方法で使用してはいけません。

ドローンに適した農薬については、「農薬登録情報提供システム」において、検索することができます。

農薬登録情報提供システム(外部リンク)

農薬散布には補助者の設置は必須?

農薬等の空中散布を行う場合には、原則、補助者を配置する必要があります。
ただし、補助者を配置する場合と同等の安全体制が整えられれば、これを補助者の配置に代えることができます。例えば、国土交通省航空局HPに掲載されている「無人航空機による空中散布を目的とした航空局標準マニュアル」に即して、立入管理区画を明示し、第三者の立入りを確実に制限することができる場合は、この限りではありません。

立入管理措置については下記記事を併せてお読みください。

【行政書士が解説】ドローン飛行の必須ルール「立入管理措置」とは?

都道府県に農薬の散布計画の作成、提出が必要?

都道府県によっては、養蜂家への情報提供、農業用ドローンの活用状況の把握などのため、独自に農薬の散布計画の提出を求めている場合があります。散布する農作地を管轄している自治体に確認しましょう。

風向きや風速による散布の影響をどの程度考慮すればいい?

空中散布においては、散布方法(飛行速度、飛行高度、飛行間隔及び散布時の風速)の各要素がそれぞれ薬剤の拡散に影響を及ぼします。このため、ドローンメーカーが取扱説明書等に記載した機体に適した散布方法に従い行うことが望ましいです。 また、散布の際には、実際の農薬の散布状況、気象条件の変化を随時確認しながら、実施区域外への飛散(ドリフト)が起こらないよう十分に注意して行ってください。 なお、強風により散布作業が困難と考えられる場合には、無理に作業を続行せず、気象条件が安定するまで中止することも重要です。

農薬残液の処理方法はどのようにすればいい?

農薬の残液については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137 号)に基づき、使用者が産業廃棄物として適切に処理する必要があります。 散布薬剤の準備にあっては、使用残の発生しないよう必要量を購入し、使い切るようにするとともに、散布装置の洗浄液はほ場内で処理してください。農薬を河川や水路に流すなどの不適切な処理は絶対に行わないようにしてください。 なお、使用者自ら処理できない場合には、都道府県の知事、市の市長が許可した産廃処理業者にその処理を委託することができます。以下の(公社)全国産業資源循環連合会ホームページ(※)では、正しい処理委託の手順・方法について案内されているので参照ください。

※ 排出事業者の方へ(公益社団法人全国産業資源循環連合会)

農薬等の空中散布を行った際に、事故が発生した場合にはどうすべき?

空中散布中の実施区域外への農薬飛散(ドリフト)、農薬流出等の農薬による事故については、空中散布ガイドラインの別記様式(事故報告書)を作成し、その実施区域が所在する都道府県農薬指導部局まで提出ください。
また、無人航空機の飛行における

(1)航空法に基づく事故
① 無人マルチローターの飛行による人の死傷(重傷以上の場合。農薬に起因する目の損傷を含む。)
② 第三者の所有する物件の損壊(農薬に起因する農作物の被害を含まない。)
③ 航空機との衝突又は接触(2)航空法に基づく重大インシデント
① 航空機との衝突又は接触のおそれがあったと認めたとき。
② 無人マルチローターの飛行による人の負傷(軽傷の場合。農薬に起因する目の損傷を含む。)
③ 無人マルチローターの制御が不能になった事態
④ 無人マルチローターが発火した事態(飛行中に発火したものに限る。)

上記については、航空法第132条の90及び91に基づき、飛行の許可・承認を行った地方航空局保安部運航課又は空港事務所に無人航空機に係る事故等の報告を、原則DIPS における事故等報告機能を用いて報告する必要があります。 国土交通省への事故等の報告にあっては、下記の報告要領を参照ください。 他にも、(1)に該当する事故が発生した場合には、航空法第132条の90の規程に基づき、負傷者が発生した場合、ただちに無人航空機の飛行を中止し、事故等の状況に応じ、危険や被害の拡大を防止するために必要な措置を講じてください。

農薬散布事故報告

 

農薬を散布するどれくらい前に申請すべき?

国土交通省への飛行許可申請が必要となります。
補正などの余裕をもって2~3週間目には申請しましょう。
定期的な農薬散布を行うのであれば、1年間繰り返し使用できる包括申請がお得です。
手続きの代行を行っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

ドローン専門行政書士

農薬散布手続きの代行費用について

弊所では、農薬散布などのドローンに関する手続きの代行を承っております。

サービス内容料金(税込)備考
機体登録5,500円国土交通省への機体情報登録
包括飛行許可申請19,800円目視外、夜間、人・物件から30m未満、**人口集中地区(DID)**等
飛行方法追加オプション11,000円危険物輸送 (5,500円) + 物件投下 (5,500円)
農薬散布計画書作成5,500円都道府県への届出(自治体様式に対応)
単品合計41,800円

 

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